感情を味わい尽くす大人の楽しみ

オーストラリアとニュージーランドでは、当たり前ですが、それぞれの国のワインをたくさん目にしました。大きなスーパーのワインコーナーに、例えばニュージーランドワインだけが並んでいる光景に、目が釘付け。
コーヒーが好きなのにカフェインに弱くて飲めないのと同じで、ワインが好きだけど、アルコールには弱いという面倒臭い私。ですが、ワインの味の複雑さを舌で追う過程は好きなので、機会があると少し飲みます。(詳しいとか、分かるわけではありません。)
ワインの楽しみは、わかりにくい味の複雑さだと言われます。私の味覚は未熟で、その複雑さを味わい分ける(?)ことができないのですが、なんとなく複雑だ、ということはわかります。意識して味わう経験をたくさん経て、複雑に絡み合った味一つ一つに気付きながらも、全体としてのまとまりを楽しむことが出来るようになるのでしょう。私もそんな楽しみ方が出来たらな〜と、NZスーパーのワインコーナの前で立ち尽くす。
話はいっきに飛ぶようですが。人生の味わい方も、同じなのでは、と思うのです。最初は、甘い、塩っぽいといったわかりやすい美味しさを求めるように、楽しさや興奮など、わかりやすい感情体験を求めやすいかもしれません。でも、人生の醍醐味としては、分かりにくい感情が複雑に入り混じった体験が出来るようになることなのでは、と。苦味と甘み、苦しさと喜び、悲しみと安堵。それぞれの感情に繋がる記憶。一つ一つの感情に気づきながら、つながりをたぐり、感情全体を体験する。人生の複雑さと同じように、複雑に絡み合う感情を味わえる時、人として成長してきた喜びにもつながって、感情を味わっている”自分の器”を体験することが出来る。
ワインの楽しみは、大人の楽しみ。複雑な感情の味わいも、何十年も生きてきた歴史と経験があるからこそできる楽しみ。全ては、一つ一つをじっくり味わうことから。