もうひとつの流れる時間・ウルル

「もうひとつの時間」は、星野道夫さんがアラスカの自然、特にクジラの時間を思う時に使われた言葉だ。
この大きな岩を見て、その、もうひとつの時間を目撃している感じがした。
原住民の歴史。西洋人の歴史。観光地の歴史。開発。観光客。今までの私。これからの私。大勢の人と一緒に、日暮れのウルルの色をカメラに収めている私。
ウルルを眺めながら、星野さんの本に書かれていたクジラが跳びはねる光景が頭の中でダブル私。
私とも、歴史とも、別の所で流れる時間がある。
人類の歴史が始まる前から、そしておそらく終った後にも続くだろうもうひとつの時間。
その時間の一部になりたい強い衝動さえ湧いてくる。岩を登りたいという衝動は、きっと、一部になりたい、手のうちに収めたい欲なんだ。
もうひとつの時間へはせる思いが、胸を占める日常をゆっくりと追い出していく。
2019-06-16 by
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